Exploring Brilliance

自然の光を活かし
自由な写真を撮り続ける

大道雪代

Photographer Yukiyo Daido

写真は「自由で面白く、たくさんの可能性を秘めたもの」という大道雪代さん。力強さとやさしさを兼ね備え、ときには繊細に、そして神秘的に表情を変える魅力あふれる作品です。

被写体との関わり方、プロカメラマンとしての意識のあり方、そして技術面では光の捉え方などをお聞きしました。

Section

あるがままの姿を、
その場にある光と影を最大限に生かして撮る

Happily and Merrily

マンダリン・オリエンタル・ダラデヴィ・ホテル/チェンマイ
写真家になろうと思われたのは?

美大の授業でカメラにはまり、講師の写真家の先生の紹介で、京都のフォトスタジオに入社し、まるで芸能界にでも入るような夢心地で写真の世界に入りました。アシスタントと同時にプロとしての仕事もさせてもらいましたが、当初はプロのカメラマンの仕事といっても芸術的な写真ではなく、企業のパーティーなどの記録撮影や、広告などに、切り抜きで使用する商品写真の仕事が多かったです。きちんと美しく記録する事を要求されるため、身近な人や物のスナップ写真を撮ったり、商品をキッチリと撮る練習をしました。

当時は、スナップを撮る35ミリのカメラはフルマニュアルのカメラ(canon F1)を使っていたので、失敗も多く生活費のほとんどをフィルム代と現像代に費やしました。カメラを少しだけ思い通りに扱えるようになって、自分が撮りたいように撮れる事に喜びを覚えはじめたころに、写真家になってみたいと思いました。

撮影のとき、心がけていることはありますか?

撮影はいつも「楽しく面白く」がモットーです。終了後、関係者に「仕事やのに、とても面白かった」と言っていただけるような雰囲気作りを心がけています。また、広告などの撮影の時は、ディレクターやデザイナー、コピーライターなど、アイディアやその広告に対して強い思いを持っている職人達と共に創るので、自分の世界観を無理に押し付けないようにしています。みんなの思いと、自分の思いがバランスよく表現され、かつインパクトのある絵作りに努めます。ポートレートやファッションの撮影では、面白い事を言ったり、わざと変な顔の写真を撮って、モデルやスタッフを笑わせ、楽しい空間をつくる事を心がけたり、商品撮影では、世間話をしている間にいつの間にか撮影を終えていたりしますね。

ふざけながら仕事をしているわけではなく、撮影の現場って「写真を仕事にしていない方にとっては、非日常ではないか?」と思うのです。撮影を依頼してくださった皆様に写真撮影という仕事のときだけは、「遊びに来たみたいに楽しい!」と思っていただける空間づくりを心がけています。


Section

土地の文化の重みを表現したい

Conveying the significance of culture

ワット・ウモーン/チェンマイ

京都での撮影も多いそうですが、タイの古都チェンマイとの共通点はありますか

挨拶と気配りができれば、撮影条件はあまり違わないような気がします。例えば、人を撮るときは笑顔で声をかけたり、なるべく三脚を使わないようにしています。私だけかもしれませんが、三脚は大げさな感じがして、自分だけでなく被写体の動きも鈍ってしまうような気がするんです。また、寺社仏閣の撮影のときは、傷をつけたりしないように、室内や、畳、土、苔、植物、木の根の上には三脚はたてない方が良いと思います。どうしてもそこに三脚が必要なら、敷物をひいたり、靴下を履かせたりなどの配慮があった方が撮られる方も安心ですよね。過去の人が大切に守ってきた建物や風景、道具、文化などに対して、敬意をはらい、気配りを忘れずに撮影するということは世界共通だと思います。

ワット・ウモーン/チェンマイ

チェンマイまたはタイの特徴をよくつかまれた写真が多いですね。その土地を現す「何か」をどのように見つけ、ファインダーを通して表現されているのですか?

「いい!」と思ったら、なんでも撮影しています。膨大な量の写真の中から土地を表現できている写真を、帰国してから抜粋しています。その中には、「これしかない!」という感じで、露出を変えて3段階ほどしか撮ってない写真もありますが、ほとんどは一つの被写体に対して、広角レンズ・望遠レンズ・マクロレンズ・その他様々なレンズで、たくさんの数を撮っています。メインの被写体の周辺にあるものを全て撮影したりもします。

マンダリン・オリエンタル・ダラデヴィ・ホテル/チェンマイ

ホテル職員の写真ですが、バックの真っ白な塀とピンクの傘と女性の服装がとても上品なコントラストですね。歩く女性の優雅さが伝わります。撮影状況とカメラの設定などを教えてください。

かなり遠くから歩いて来られる姿に気付き、目の前まで来るのを待って会釈をし、カメラを見せて笑顔を向けたら"Yes"と言ってくれたので、シャッターを押しました。言葉が話せなくても通じあえた瞬間です。私は海外経験が少ないですが、タイの人はカメラに笑顔を向けてくれることが多いイメージがあります。

撮影モードは、絞り優先AE/Av(絞り数値)9.0/ISO感度400/レンズEF24-70mm f/2.8L USM/焦点距離34.0mmです。


タラード・プラトゥー・チェンマイ/チェンマイ

逆に、この写真は、女性のたくましさに惹かれて、移動の車の窓から撮りました。逆光の中、バックミラーから反射した光が顔に当たっているのもカッコイイでしょう?


Section

「いい!」と感じた瞬間に、
その空間が切り取られて頭に浮かぶ

Excitement pops the shutter in my mind

ピン川沿い/チェンマイ
大道さんの写真は、光の当たり方がとてもキレイですね。いただいたタイトルが「光」だったのは、それを意識されているからですか?

11月という健やかな気候の時に行ったので、光がやわらかく、日本の太陽光とあまり違いがありませんでした。このときは、自分がイメージしていた「タイの光(太陽)」を必死で探していたので、撮影のときに一番執着していた「光」をタイトルにつけました。

「あっ、いい!」と感じる被写体を見た瞬間、肉眼で見ている映像とは違うイメージの「一枚の絵」として、その空間が切り取られて頭に浮かびます。それに合わせて、露出の段階を変えながら撮影していきます。

初心者の方は、動かない被写体なら、時間が許す限り露出を変えながら、角度の違ういろんな方向からの光を試してみてください。まずは、自分の感覚で光を把握することからスタートです。1枚であきらめないで、せっかく出会った一期一会の被写体に対して、粘り強く撮影をしてください。失敗をしてもかまわない。それを繰り返すことで、光が読めるようになり、動く被写体も瞬間に思い通りの光で撮ることができるようになります。


メータマン・エレファント・キャンプ/チェンマイ
エレファント・トレッキングの写真はやわらかい光が印象的です。この角度で撮ったのはなぜですか?

この写真は半逆光で撮っています。この光景を見た時、「天国があるなら、きっとこんな雰囲気の場所がある」と思えたのです。静かで平和な空気を感じて、「私もそこに行きたい!」と、象の後を追うように撮りました。わざと太陽の光を直接ファインダーに入れ込み、肉眼なら少し目をしばたかせるような白けた画面にして、夢のように心地よい空間を表現しました。

朝、昼、夕方、それぞれの時間帯に応じた撮影テクニックを教えてください。

天候や、その時間帯をどう表現したいかで、コントロールの仕方が変わります。例えば、女性が傘をさしている写真は、暑い国の「昼間」を表現したかったので、空の青が黒ずむほど青くなるように、適正露出より1絞りアンダーで撮影しています。同じような写真をオートフォーカスで撮影する場合は、測距点(ピントを合わせる部分)に、自動的に露出が合いますので、ピント合わせだけ手動にして、撮る被写体の一番出したい色の部分に測距点を合せ、合わせたいところに手動でピントを合わせるという手段もあります。はじめは難しいですが、慣れるととても簡単に思い通りの写真が撮れるようになります。


マンダリン・オリエンタル・ダラデヴィ・ホテル/チェンマイ
光によって被写体のイメージが大きく変わるのですね。陽の差すタイミングを待ったりもされるのですか。

光が与える影響はとても大きく、写真がガラリと変わります。

写真は生ものですから、見た瞬間に撮ることが比較的多いですが、空を見て、雲がたくさんあるときは、光の強い写真と、雲が太陽を隠して光がフラットになったときと、二種類撮ることもあります。また、違う時間帯のときはどう見えるのかが気になって、もう一度その場に行くこともあります。やっぱり「これだ!」と思ったときに、写す写真が一番いいですけどね。仕事では撮影イメージが決められていることが多いので、何度もロケハンに行って、何時に撮影したらいいか、晴れの日がいいか曇がいいか、などの確認をする事もあります。


Section

構図や光の具合など、
頭の中で絵を作る作業をスピーディーに

'Quick and exact’ is the key

マンダリン・オリエンタル・ダラデヴィ・ホテル/チェンマイ
「マンダリン・オリエンタル・ダラデヴィホテル」は、とても面白い構図で、神秘的な一枚ですね。

うねうねとした長い胴体の先にある竜の顔。その顔だけに朝日が当って、竜がとてもリアルに見えました。昼間見たときはただの像だったのが、「朝日を浴びて、命を吹き込まれた竜」というイメージに見えたのです。その竜にビビっている私の気持ちを表現した撮影方法です。もし、この竜が本当に動き出したら、この角度から見るのが精いっぱいではないか、という恐れにも似た気持ちが表れた1枚です。

光をうまく取り入れるために、好きなレンズやおすすめのグッズはありますか?

好きなのは単レンズ全般です。仕事では使いにくいのですが、安い中古のものほど面白い写真になります。簡易のグリップ型ストロボは、夕日などを背景に逆光で記念写真を取る場合にも使えるので、ひとつ持っておくと便利です。

これだ!と思う瞬間にすぐに撮れるよう、通常カメラの設定はどうされていますか?

状況によって違いますが、露出が安定していない所ではISO400/Av(絞り優先)F5.6~8にしていることが多いです。一日で複数ヵ所を回って撮影するので、いろんな場面に合うように、いくつもの種類のレンズを持ち歩いています。

短時間で撮影するためには、構図や光の具合など、頭の中で撮りたい絵を作る作業をスピーディーに行うことだと思います。


Section

子ども、大人、老人、
すべての人が熱心に祈る姿が絵になる「イーペン」

Yii Peng – the gathering of heart and souls

サンサーイ・イーペン祭り/チェンマイ
おすすめの撮影スポットを教えてください。

スポットではないのですが、タイの各地で行われるお祭り、ロイクラトン祭りは本当に感動しますので、おすすめです。こちらの写真は、チェンマイのロイクラトン祭り「イーペン」です。コームローイと呼ばれる熱気球を天に放つことで有名で、熱気球が一斉に上がるシーンは、どんな目線からも壮大です。これらはタイの報道関係者の方が組んだ足場に、交渉して乗せていただいて撮影しました。ここでは三脚を使用し、レンズはEF24-70mm f/2.8L USMです。


サンサーイ・イーペン祭り/チェンマイ

ここでは、イベントの空気に思いっきり飲み込まれて、感情の赴くままにシャッターをきりまくる事をおすすめします。観光客が多い祭りですが、地元の方の美しい祈りの姿もたくさん撮影できます。祈りが生活に密着しているだけあって、子ども、大人、老人、すべての人が熱心に祈る姿が、とても絵になる光景でした。

写真を撮る喜びや、今後の目標についてお聞かせください。

「写真うつりが悪い」と思い込んでいた方が、「私って、意外といける!」と自信を持つきっかけになったときは、本当に嬉しいです。これからも、私が撮った写真でたくさんの人が幸せな気持ちになってもらえたらと思います。