島で出会ったアーティストKALAO

ニュー・ニュー・タイランド僕たちが好きなタイランド Vol.12

この連載のVol. 2で訪れた秘密の島。きれいなビーチでサーファーガールズにインタビューをした後、メンバーのひとりが面白い人がいるよと、スクーターで細い山道をくねくねと登りたどり着いたのはジャングルの中、ユートピア?のような場所だった。
Musikaと書いてある看板。今晩はパーティ?おそるおそる敷地に入ってみるとなんともカラフルで今にも動き出しそうな小さな家がいくつもある。ここに住んでいるのはアーティストのKALAOさん。

「この島に越してきたのは16年くらい前。人生にアドベンチャーが欲しいと思って。それまで住んでいたバンコクからこの島へ越してきたの」
のんびりとした小さな島のジャングルの中にこんな場所があるなんて!少しだけ大きめの家から満面の笑みで出てきた彼女、身体のあちこちにタトゥー。なんとも個性的な容姿に引き込まれる。

「この少し大きいのが私の家よ。ボーイフレンドが建ててくれて、ペイントやデコレーションは私が仕上げたの。私はフリーハンドで自由な線を描くけれど、彼は長さをしっかりと測ってまっすぐ直線を描ける人なの。私とは違うけれどとても素敵な家を建ててくれて嬉しい。小さいけれど必要かつ十分なサイズの家。料理を作るのが好きだからキッチンは大きめに使いやすく設計してもらったの」

家にお邪魔させてもらう。外観もすごいけれど、彼女がすべて仕上げたというインテリアも個性的。カーテンから壁に飾られた絵、彼女が描いた作品だ。好きな物に囲まれた暮らしは楽しいというKALAOさんは、アーティスト、タトゥーアーティスト、DJ、イベントオーガナイザー、ファイヤーダンサー、服も作っているという。いろいろ聞きたいことはあるけれど、まずは敷地にいくつかある小さな家は何?

「ここで毎週土曜日に「Musika」というパーティーイベントをやっているの。企画、DJ、ファイヤーダンスすべてを私がやっているの。敷地の奥には私が作った商品を販売する店もあるし、ダンスホール、バーもあるの。大音量で音が出せるスピーカーや照明も完備していて、島中のパーティー好きたちが集まってくるのよ。パーティーが終わると帰るのが面倒になって、そのあたりで寝てしまう人がいるのよ。だからそんな人たちが泊まれるようにこの小さな家を作ったの。家の中にはちゃんとベッドもあるのよ。この家はゴミとして出されたガラスのボトルやプラスチック、冷蔵庫のドアを集めて建てたの。この家はボーイフレンドではなくて私が作っているからどこも曲線でしょ。笑。

この島にはゴミの焼却場がないから、ゴミがたまると、船で本土へ持って行く必要があるの。だからなるべくゴミを出さないようにしている。プラスチックやガラスのボトルはこれから何百年経っても土には還らない。だから逆にそういった物を使って家を建てたら腐ることもないでしょ。発想の転換。この島には木や葉っぱを使って建てられた家が多いの。雨が多い島だから10年くらいで建て替えなければいけなくなる。ここの家は私がいなくなったとしてもずっと残っているからね。ボトルやプラスチックはビーチクリーンをしながら集めて来たのよ。

素晴らしいアイデアだね。それにボトルやプラスチックを上手に使っている。この島での暮らしはどう?

ありがとう。ここでの暮らしは私に合っていると思うわ。どんな格好をしていても自由。靴を履いていなくてもいい。働き方、暮らし方もその人それぞれが自由なスタイル。前に住んでいたバンコクではそうはいかなかったわ。一人だけおかしな格好をしていたらみんなから変な目で見られたりするし、規則に従って暮らさなければいけないことが多かった。この島では自分の得意なことを仕事にしたり、やりたいことをしながら暮らせるのが私に合っていると思う。とってものんびりした島だから、何もせずにぼーっと過ごすこともできるけれど、私は毎日忙しく動いているのが好き。とてもハッピー。とにかくやりたいことがあったらすべてチャレンジしてみるの。初めはうまくいかないことがあっても何度もチャレンジしていくうちに納得できる物が作れたり。この島は小さな島だから欲しいと思っても手に入らない物があるからそんなときは自分で作るのよ。すごく楽しい。この土地を手にしたときはゴミだらけだったこの場所も今では自分の好きな物だけがある。毎週パーティーを開いてみんなが楽しんでくれる姿を見るのも好き。

最後にKALAOさんのこれからの夢を聞いてみた?
もしこの家に住みたい人がいたら、その人にここを譲って、今度はどこか違う場所にまた新しい家を建てて暮らすわ。またその家に住みたい人が現れたらまた譲る。そういう風に暮らせたら理想的。自分が作るアート作品が人の手に渡るのは嬉しいことだからね。いま、この島での暮らしはとてもハッピーよ。私の作品のようにね!

小さな島で出会ったKALAOさん。この島を訪れなかったらこんな面白い場所を見ることもできなかったし、彼女の話を聞くチャンスもなかっただろう。旅に出ると何が起こるかわからない。実際に足を運び、きれいな景色を眺めたり、新しい人と話をしてまた何かを考える。それが僕にとっての経験となっていく。それが楽しくて僕は旅を続けるのだろう。

文 / 写真:竹村卓

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