Rough Studio and The Sparrow Pizza Studio

ニュー・ニュー・タイランド 僕たちが好きなタイランド Vol. 10

前回紹介したSAUCE COFFEEのピッコロから「ワクワクするようなプロジェクトを面白い人たちと進めているところなの、その人たちにぜひ会ってみてよ」とメッセージが届いた。一組は陶芸家、そしてもう一人はピザ職人。それぞれジャンルは違うけれど物作りをするなんだか面白そうな人たち。それにピッコロがお勧めしてくれるならぜひ会いたい!バンコクをベースに活動するそんな人たちに会って来た。

一組目は「Rough Studio」という陶芸家のカップル。SAUCE COFFEEを立ち上げたピッコロは、コーヒー豆だけではなくそれにまつわるプロダクトを作ることも考えていて、「Rough Studio」と一緒にオリジナルのドリッパーなどを製作しているそう。フォトグラファーとして20年近く活動しているプイさん。「僕の彼女がずっと陶芸をやっていて、僕も昔から手を動かす物作りが大好きだったんだ。僕は陶芸を初めて3年半くらい。彼女のインは広告代理店で働きながらずっと陶芸をやっていたんだけれど、その会社を辞めて本格的に陶芸の道を進み始めた。そして僕と2人で3年前位にこのスタジオを立ち上げたんだ」

陶芸で大切にしているのは土だと話す彼女のインさん。「焼き物を作るのにまず見つけなければいけないのは土。タイ国内でもいろいろな土が採れるの。国全体で見ると白土がたくさん採れるんだけれど、ここバンコク周辺でよく採れるのは赤土。この赤土はタイの人にとってとてもなじみのある物で、どの家庭でも必ずこの土を使った陶器があるくらい。私たちは自分たちの住む場所で採れ、この安価でどこでも手に入る土を使って、見たこともないようなオリジナルの作品を作りたいって考えているわ」

まだ会ったばかりなのに土の話になると途端に夢中になる二人。仲の良さが伝わってくる。パーククレットというこの赤土の名前は、この土がよく採れる街の名前だという。「赤土と他の種類の土を混ぜて独特な風合いを出して楽しんでいる。性質の違う土同士を混ぜると焼き方にも工夫が必要なんだ」

なるほどね、スタジオに並んでいる作品も独特な模様がとてもきれい。しかも土そのものの色を生かしているという。ピッコロと始めたプロジェクトのことも聞いてみた。

「ピッコロとは10年来の友だちなんだ。彼女がコーヒービジネスを始めた時から知っている。僕たちもコーヒーがとても好き。陶芸を始めた時、まずは植木鉢を作り始めて、さて次は何を作ろうか?って考えたときに毎日飲むコーヒーにまつわる物を作りたいって思ったんだ。コーヒードリッパー、サーバー、そしてカップ。その機能や使い勝手が大切になる作品だからコーヒーのエキスパートと一緒に作るのがベスト。そう考えたとき、真っ先に思い浮かんだのがピッコロだったんだ。ピッコロとSAUCE COFFEEのデザイナーのラタ、そして僕たち2人の4人で進めているプロジェクト。試作品を作ってはみんなでコーヒーを淹れて、味を試しているんだ。陶芸作品としてはもちろん、機能や使いやすさも重要な物になるからそのプロセスが楽しいよ。商品化までもう少しなんだ」

コーヒー豆の焙煎だけでなく、コーヒーをどう楽しむのか?そんな生活スタイルまでを考えたSAUCE COFFEE。そして機能性という新しい課題を考えながら作品作りを楽しむRough Studioの陶芸家。なんだか素敵でわくわくするプロジェクト。その作品を使ってコーヒーを淹れるのがとても楽しみだ。

そして次にピッコロが紹介してくれたのはバンコクのエカマイというエリアに昨年オープンしたピザ屋「The Sparrow Pizza Studio」。同じ店内でSAUCE COFFEE のポップアップをしている店舗でもある。美味しいピザとコーヒーが同時に楽しめる!客席からもよく見えるキッチンでテキパキとピザを作っているオーナーのメイナーさんはタイのイサーン地方のウドンタニー出身。
 

「僕が生まれたウドンタニーは農業が盛んで、両親は餅米と塩作りをしているんだ。ウドンタニーの地下水には塩分が多く含まれていて、その水を吸い上げて塩を作っている。ミネラルが豊富でそのまま使っても美味しいし、発酵食品を作るのにも適している塩なんだ。上澄み部分にできる特に貴重な塩の結晶部分をお店で使っているんだ。そしてカオニャオと呼ばれる餅米もイサーンの特産品だよ」

昨年オープンしたばかりだけれどすでに人気店となりバンコクの人たちの舌をうならせているメイナーさん。この店をオープンさせる前に働いていたプーケットのイタリアンレストランでの経験、そしてチェンマイのカフェレストランでのサワードウブレッド作りがピザ作りに興味を持ったきっかけだという。

「生まれ育ったウドンタニーで僕のおばあちゃんが小さな食堂をやっていて、学校が終わった後や休みの日はその食堂でおばあちゃんの手伝いをしていたんだよね。皿洗いから食材の下ごしらえまで。小さなお店だったけれど、タイのラーメン、クイッティアオやイサーン料理で有名なパパイヤサラダのソムタム、何でも作っていたんだ。だから小さな時から料理はずっと好きだった。イタリアンレストランとサワードウブレッド作りの経験からピザを作りたいと思ったんだ。

話をしながら手際よくピザを作るメイナーさんの手は止まらない。ピザを作る上で一番大切にしているのは素材だと言う。「人気メニューはトマトソースを使ったクラシックなピザ。バジルペーストを使ったピザも人気だよ。トマトやバジル、ハワイアンピザで使うパイナップルもチェンマイとチェンライの農家の人たちがオーガニックで作った物を使っているんだ。ピザはタイでみんな知ってるし、大好きな食べ物。これを最高の食材で作ったら絶対に美味しい物が作れる。ハイクオリティの食べ物を誰もが手に届く値段で楽しんでもらいたいと考えたらピザがぴったりだったんだ。多くの人たちに楽しんでもらえるのがとても嬉しいよ。僕が目指しているのは日本の寿司のようなピザ。シーズニングは最小限にしてシンプルで素材の味がそのまま味わえるピザなんだ。そういった意味で寿司と同じ。

食材が豊富で食事に対する意識が高いタイだから生まれた美味しいピザ。このクオリティをキープするために工夫していることがもう一つある。「一日に作るピザの量を決めているんだ。そうすることでピザのクオリティが保たれるし、働くスタッフの負担も減るから。ピザがなくなった時点でお店を閉店させる、そうすることでスタッフみんなが早く帰宅できるしね。一般的にキッチンでの仕事はキツいっていうイメージだけれどこれを変えていきたいと思っているよ。ライフスタイルと働くことのバランスもピザのクオリティと同じくらい大切にしていることなんだ」

これからの夢?毎日を大切に過ごすことが大事だって思っている。美味しいピザを皆さんに食べてもらうこと。もっと大きな夢をいうと、大きな店を持つこと。たくさんの人にいい環境で働いてもらいたいし、これまで協力してくれている農家の人たちのサポートにもなるから。それにお客さんにももっと美味しいピザを食べてもらえるでしょ。みんなが幸せになれるピザ屋になりたいんだよね」

これまでの経験を通して美味しいコーヒー豆を提供するピッコロ。彼女のコーヒーに対する考え方や情熱と同じように彼女が紹介してくれた二組の人たちもビシッっと筋の通った考え方が素晴らしいと思った。そして物腰の柔らかさ、笑顔がとても印象的だった。

SAUCE COFFEE
Instagram : https://www.instagram.com/sauce.coffee/

The sparrow pizza studio
Instagram : https://www.instagram.com/sparrowpizzastudio/

Rough Studio
Instagram : https://www.instagram.com/rough______studio/?hl=ja

文 / 写真:竹村卓

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