アイランドマジックにとり憑かれたサーファーガールズ

ニュー・ニュー・タイランド 僕たちが好きなタイランド Vol. 2
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さてと、どうやって行こうか? これまでバンコクに到着すると、つい北に向かいがちだったけれど、今回の旅の目的地は南の島。バンコクの到着が夜だったために空港近くのホテルに一泊して翌朝に飛行機で出発。到着した空港からさらにシャトルバス、ボートに乗り換えて目的地を目指す。この旅のきっかけを作ってくれたのはバンコク在住の友人、Taekoさん。最近彼女のインスタグラムを見ていると、のんびりとしたきれいなビーチでサーフィンしている姿。ある時彼女にその話を聞いてみた。

あのきれいなビーチはどこ? 返ってきた答えは「とある南の島の秘密ビーチです」。仕事に隙間ができるとその島を訪れてサーフィンを楽しんでいるという。なにもないとてもシンプルな島でのライフスタイルも気に入っているという。さらに話を聞いているとそこには女の子たちのサーファーコミュニティーがあるみたいで、Taekoさんもそのサーファーガールズと一緒にサーフィンを楽しんでいるようだ。これまでタイでサーフィンができるっていうイメージがあまりなかった。なんだか話を聞いていたら訪れてみたい! そう思ってしまったのだ。

みなさんにも秘密のひとつやふたつはあるでしょ? ここではその島の名前は秘密にしておいて、ある南の島のサーファーガールズのストーリー。

島の船着き場にボートが到着。島での移動はスクーターかトゥクトゥク。ボートを下りた船着き場でスクーターをレンタルする。レンタルバイクのおじさんが棚に並んだリカーボトルを1本手に取ると、バイクの給油口に突っ込む。「とりあえず1本分のガソリン入れておくね」。なるほど、ガソリンが入っているボトルなんだね。わくわく感がすでに高まっていく。自動車は島に救急車の一台のみ。船着き場からスクーターで走り始める。細い道をのんびりと進む。周りの緑はとても深く、トタンの屋根だけがある商店、建物軒先部分をリビングのようにしてでくつろ島の人たち。この小さな島に着いたとたん、島の生活が目に飛び込んでくる。東京から来た僕にとって信じられないくらい深い緑の中を10分ほど走ると、サーファーガールズが集まるビーチに到着。

驚くほどきれいで広いサンドビーチ。青空と海のブルーがきれいなグラデーションを作っている。そこには海水浴を楽しむ人、そして沖にはサーファーが数人あとは昼寝をしている犬たち。気がつくとだいぶ長い時間この目の前のきれいな海を眺めてしまっていた。確かにこの場所は秘密にしておきたいよね。そうして、このビーチに集まってきてくれたのはサーファーガールズのメンバー、まずスクーターに2人乗りでやってきたのはイン ( Ing ) とジャニー ( Janee ) 、そしてすでに海で波に乗っているタイニー(Tinee)と、この島を教えてくれたTaekoさん。みんなが笑顔で集まってくれた。

「とてもきれいな場所でしょ?」。そう話をしてくれのはイン、彼女はチェンマイ出身で初めはツーリストとしてこの島を訪れたという。「訪れるたびにこの島で生活している人たちのライフスタイルに憧れて住むようになったの。この島で24時間自由に電気が使えるようになったのもほんの2-3年前からなの。そのくらい何もないとてもシンプルな島なの」。今彼女はこのビーチ近くでホステルを経営しているという。「ホステルの敷地ではバーも経営していて、夜になると友だちがみんな集まって来て、ホステルに宿泊しているお客さんと楽しい時間を過ごしている。この島に住むようになって本格的に波乗りをするようになった。いまでは毎日7時間くらい海に入っているの。ビーチも目の前だから。ここはとても広いビーチで3キロも砂浜が続いているのよ。波も広い範囲で立つのでどこでも乗ることができるから波の取り合いにはならないの」

インと同じ大学を卒業したジャニー、「私もこの島に移り住んでからサーフィンを始めたの。最初は2週間のつもりで訪れたけれど、3週間、1ヶ月、2ヶ月、結局半年も滞在してしまって、結局この島に越してきたの。私のように島に移ってきてサーフィンを初めた女の子たちが集まってサーファーガールズのチームができたって感じ。Taekoもバンコクからこの島に来るとこのビーチで一緒にサーフィンを楽しんでいるわ。ガールズパワーよ! 海の中では自然を相手に波に乗る真剣勝負がすごく好き。そして周りを見渡すと仲間たちがその素晴らしさをシェアしてくれているのが最高」

「この島の魅力はたくさんあるわ、クルマも走っていないし、大きな資本が入ったホテルもないの。電気の供給もいまだ不安定だし、Wi-Fiや携帯もつながりにくい。エアコンもお湯がでるシャワーもほとんどないわ。だから昔ながらのライフスタイルが残っている。不便なところもあるけれど、このシンプルな生活ができる場所ってとても貴重だと思う。友だちとは携帯やソーシャルメディアで会話するよりも実際にあって話をする時間の方がずっと長いの、そこが好き」。ここに住み着いた人の間では、「アイランドマジック」と言われる物があるという。「この島を訪れてその『マジック』にかかってしまった人はこの島が好きになってずっと離れない。もしそれにかからなかった人は一度きりの滞在になる、そのどちらかなの」

海から上がってきたタイニー。「タイでつけまつげを付けたままサーフィンをしているのは私くらいよ! 3年前にこの島を訪れてサーフィンを始めたの。他にアクティビティはないし、こんなきれいなビーチがあるのにサーフィンをしないなんてもったいない。普段の仕事? 私はパーティーのオーガナイザーをしているわ。見たらわかるでしょ? なぜかこのビーチはガールズサーファーばかりが集まるのよ。彼女たちと一緒にサーフィンしている時間が本当に好き。ガールズパワーを感じるわ。でもね、本当はボーイズも歓迎よ!」


左から Taeko, Janee, Tinee, Ing

彼女たちはどうやら「アイランドマジック」にかかってしまった人たちのようだ。そんな人たちだからこそすぐに打ち解け、島を訪れた人たちをすぐに受け入れてくれる。この島の魅力はおおらかで豊かな心を持つ彼女たちにもあるようだ。僕もまたこの島を訪れたい、そして彼女たちと話したいと思った。僕までも島の魔法にとり憑かれてしまったようだ。

そしてここにももう1人、イン、ジャニー、タイニーたちが大推薦するサーファーガール。島の若手ホープANDA(アンダー)ちゃん。サーフ大会で優勝経験を持つ。島出身。サーフィン歴1年、若干11歳。この島で一番の腕前を持つサーファーガール。夢はプロサーファー。サーフィンをしているときはとても幸せだだという。

文・写真:竹村卓

≪プロフィール≫
竹村卓 
東京都出身。中学生でスケートボードに出会う。アメリカのカルチャーに憧れ、21歳で渡米。ロスアンゼルスでカルチャー誌、ファッション誌、広告などのコーディネーターとして活動する。帰国後ライター、編集者として、数々のカルチャー誌で執筆、広告制作に携わる。アート展などのキュレーターとしても活動。著書に『ア・ウェイ・オブ・ライフ~28人のクリエイタージャーナル(P-Vine BOOKS)』、『ニュー・ニュー・タイランド 僕が好きなタイランド(トゥーヴァージンズ)』がある。www.taqueria.jp
■ カルチャーブック『NEW NEW THAILAND 僕の好きなタイランド』

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